朝の8時ごろ、空港内のベンチの上で目が覚めた。
ドンムアン空港に到着したのは昨日の16時ごろ。微妙な時間帯だったので空港泊をしていた。いたるところに横になれるベンチがあって寝る場所には困らなかった。
が、朝の8時ともなると流石に混雑してきたので自転車をカートに乗せて人の邪魔にならないところに向かった。これから自転車を組み立てないと。
とりあえず梱包をはがしすべての部品を確認
良かった.......何も壊れてなさそう。
自転車をカチャカチャ組み立てていると後ろから声をかけられた。振り返ると大きな段ボール箱を抱えた西洋人風のお兄さんが。
彼を見た瞬間とてもうれしくなった。縦長の大きな段ボールに入っているものなんて一つしかない。
お兄さんの名前はデル。スペインから来た彼は中南米からスタートして自転車で世界を回っている最中とのこと。慣れた手つきであっという間に自転車をくみ上げていた。見たことないフロントキャリアだなと見ていたら、これ実はリムを再利用してるんだぜと教えてくれた。
まだ海外サイクリングビギナーの僕を気遣ってくれて、バンコク中心地まで先導してくれることになった。
ちゃんとブレーキが利くかチェックしバッグを荷台に取り付けいざ出発。
空港から一歩出ると、もうそこには東南アジア特有の熱気と喧騒が。
道路を見てみると、車もオートバイも容赦なく飛ばしている。そして恐ろしいことに車線変更も左折もウィンカーなんて使わない。
突然曲がったりするし突然寄ってきたりする。
「こんなとこ自転車で走る場所じゃねえ......」
尻込みする僕とは全く違い、すでに東南アジアで走ったことのあるデルさんは颯爽と漕ぎ始めた。
それを見失わないよう自分も漕ぎ始めるが.....ドンムアン空港近くの幹線道路はとにかく交通量が半端じゃない。
観光客を乗せたタクシーやバス、貨物を乗せたトラック等が溢れかえっている。
路肩を走る僕らの頭一つ分横を大型のバスがかすめるように走っていく。
冷汗が止まらない。
日本の殺気立ったドライバーもここまではしないぞ.......
そんなカオスな道路にあってデルさんの走りには迷いがなく、複雑なバイパスから的確に進むべき道を選んでいた。車線を変更するときには腕を水平に伸ばし曲がる方向をはっきりと指差し、そして上手く車線に乗れた時には後続の車に親指を突き立ててThanksと合図を送る。
デルさんのおかげで何とかバンコクの中心地に到着。それぞれ別の宿を予約していたのでここでお別れ。
バンコクの走り方を教えてくれたお礼にチェキで写真を撮って一枚プレゼントしたらとても喜んでくれた。
デルさんと別れて一人で走っているととても怖かったが、それでも最初よりはちゃんと走れてる。
バンコクの道路は確かに交通量が多く危険だが、ちゃんとドライバーに意思表示ができ無理な走りをしない限り安全に走れるはず。
「なにがなんでも無事に日本に帰る!」
これだけは絶対に守らないといけない。
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